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2015-08-10

布づくり

今年に入ってちょこちょこ取材を受ける機会なんかが増え、「なんで布なんですか?」と聞かれることが何回かあった。

そんなこと聞かれる方が不思議に思ってしまう私ですが、改めてそう聞かれると、なぜ布作りにこんなにどっぷりはまっているのか、繊維にこんなにもワクワクしてしまうのか・・・

前に取引先のおじちゃんに、「おたくも糸へんに関わってもう10年になるんですな~」みたいなことを言われたのを、思い出した。

糸へん・・・ そのプロっぽい響きに、ちょっとうれしくなった私ですが・・・。

日々プリントしながらも、ああ、紡ぎたいな、あの植物で染めてみたい・・・あの素材であれを織りたいな・・・と頭の中は布、繊維へ興味でいっぱいなのである。

 

スウェーデンにいた頃、ストックホルムからフィンランドのヘルシンキまで、船で旅をしたことがあった。

船は4人の相部屋だった。そこで同じ部屋に居合わせたおばあちゃんとお話する機会があり、そのおばあちゃんの話がとても印象的だった。

なんでも彼女の従兄弟はフィンランドでもかなり有名な織りのテキスタイルデザイナーらしかった。(名前を聞いたのに忘れてしまった・・・)

そしてマリメッコの話になり、そのおばあちゃんは、うっとりと「それは戦後の色なんて何にもないくらーい時代に、マリメッコが出てきた時は本当にびっくりしたわ。斬新なデザインと色で、世界がパーっと明るくなるような感じよ。」と言っていた。

改めて私はその時、布の持つ力を思った。
会社で布づくりをしていた頃はあまり疑問を持たなかったけれど、1人で布づくりをするようになって、ふと、私がこんなことをする意味は何かあるのだろうか。作りたい布を作って、それってただの自己満足に過ぎないのではないだろうか。と自問自答することがあった。

だが、マリメッコのように・・なんて大それたことは言えないが、暮らしの中に小さな喜びを運んでくれるような布が作れたらいいな・・と思い、布を作る意味について、少し道筋が見えた瞬間だった。

後から思うと、あのおばあちゃんに会ったことは、とても奇跡のようにも感じてしまう。

そんな訳で、今日も布を作っています。

 

 

 

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