2014-08-08
手仕事の跡
前にとても安くシルクの古い着物を買った。色や柄もかわいく、シルクで気持ちよさそうだから、風呂上りにさっと羽織るのにいいかな?なんて思って買ったのだ。
でも浴衣ではなく着物なので、首元はとてもしっかり作られており、袖も普段使いにはちょっと邪魔になる。ううむ・・・と思ってしばらく眺めていた。
そして、やっぱり着物のままでは使いづらいので、四角にして薄い夏用掛け布団にしちゃおう!と思いついた。
リッパーを片手に、縫い目をザクザク切ってほどきはじめたが、ほどけばほどくうちに、心がきゅんっとなっていった。
とてもきれいなシルクの糸でこの着物は縫われていた。普通はすぐほつれてしまうと思われる端っこは、どうやっても、リッパーを差し込む隙間が見当たらないほどしっかり縫われている。
丁寧な仮止めやほつれ止め。
昔の人の手技に感服!
そして裏地も、裾や袖などの見える部分には、シルクのピンクの布を継いであり、おしゃれ心が感じられる。
この1枚の着物を作るために、いくつもの行程をひと針ひと針縫ったのだと想像すると、頭が上がらない。
そんな着物をほどいていくのは、とても忍びなく、申し訳ないような、気がしてしまう。
せめて、私もこの人を見習って、シルクの糸で手縫いで仕上げようと心に決め、背筋をのばし、下手っぴな運針でも、ひと針ひと針縫っていった。この布の持つ歴史の上に、さらに私の愛着も加わり、この夏のお気に入りの掛け布団となった。
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