繊維と布
ほんの少しだけリネンを育て、青い花を咲かせていたところまでは書きましたが、そういえば収穫については書きそびれていました。
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少しだけど種も採り、何束か収穫したので、さてさてどこで腐敗させようかと考えた。(注*これは夏の話)周りを腐敗させ、中の繊維だけを取り出すのだ。
スウェーデンでは地面の上で腐敗させた後、繊維をとった。確か地面の上で腐敗させると黒っぽいリネン、水の中で腐敗させると黄色っぽいリネンの色になると習った。
そのことを思い出し、あ、そうだ!田植えをして、水を張ってある田んぼに入れて腐敗させよう!と思いついたのだ。日本らしいやり方かもしれない!なんて勝手な思いつきで。
そんな自己流でやったのが、大失敗・・・
そうです、スウェーデンは寒いんです。えひめはあっついんです。
スウェーデンでは3週間くらい放置しておいたので、何も考えず私も水田に放置。
さあ、繊維になってるかなーと楽しみに水から引き揚げ、乾燥させ、いざ繊維を取り出そうとすると、繊維どころかポキポキに茎が折れてしまった。
ん?これがリネン・・・
と言葉を失う私。
なんで最初に調べなかったのだろうか・・・
調べたところ水温が高いと腐敗しやすいのだそう。15℃~20℃で10日から14日が目安と書いてあった。しかし私は、日中なら30度を超えるような暑さの中に3週間も放置してしまったので、繊維が腐敗してしまっても仕方がない。
何事も経験です。次からは寒くなるのを待ってから作業をしなくては。
種から育てて、ようやくここまで来たのに・・・とほほ。
それでもちょっぴり採った、私の育てたボサボサのリネンをコースターみたいに丸く編んでおいた。
なんとなく味がある。プリミティブな魅力。植物から繊維を取り、紡いで糸にし、編んだこの小さな形にも大きな存在感がある。
先日、あるところで、展示してあった日本の古布の本を特別に閲覧させてもらった。
とても貴重な資料で、昔の地方地方で作られていた布がサンプル付きで保存してあるステキな本だった。美しい葛布。模様が入っていたりして、おしゃれな感じさえする蚊帳の布。繊維の採れない寒い地方で作られていたゼンマイの毛と白鳥の産毛で紡がれ織られた布。
中でも苧麻やイラクサの繊維で織られてある布を見て、ついあのリネンのコースターを思い出したのだ。
動物や植物からいただいた繊維で作られる布。それらの命と作り手の軌跡が感じられる布の持つ存在感が、こうして心に留まってしまうのだろう。
もうひとつ、日本ではなく世界中の古布が同じようにまとめられている本があり、その中にあった草のビロードに私は釘付けだった。草で織られたビロード!
あまりにステキな布の数々に、ため息が出てしまう。こんな布に囲まれて過ごしていた昔の人がやっぱりうらやましい。
私の目指すもの作りのヒントを得たような体験だった。
来年はリネンの繊維をもっとちゃんと採れるようにがんばろうっと。