家
ついに祖母の家の改装がスタートした。
以前、はかどらない掃除について書いたのだが、間際になると、やればできるんだなと感心するくらいのスピードで片付けをこなした。
60年の年月が詰まった家には本当にいろいろなものがあった。そしてそれらのモノを介して、きっとほんの少しだが、祖父祖母の暮らしを垣間見ることができた気がする。
それぞれの思いがたくさんつまった家やモノ。片付ける作業は少しさみしいような気がする。ふと、私が小さい頃住んでいた家を思い出した。新しい家に引っ越した時、私はやっぱり前の家の方がよかったと思った。住みやすさというよりも大切な思い出や愛着があって、そういう暮らしが育まれた家というものが、愛おしいんだと思う。
そういう変わりゆくさみしさみたいなもので胸はいっぱいになるけれど、祖父祖母の思い出も引き継ぎながら、また新しくこの家とのお付き合いをしていきたい。
薄汚れた壁や柔らかくなった床などはきれいにすることに。ここは昔土間だったキッチン。高く上げられている床をまた土間に戻そうかと考えたりしたが、やはり冬の寒さを思う浮かべて板間にすることにした。キッチンの天井も取ってもらうと、立派な梁が現れた。昔おくどさんを使っていたなごりの煙突の穴まであった。そのまた昔の様子を想像しては、この家の歴史を感じたり・・・
2階は物置きとして使われていた。写真の奥の方は天井を吊っている木がむき出しである。
モノがなくなると広い空間が現れ、この木の梁がとても良い感じ。物置きにしておくのはもったいないと、ここも欲張りに使える部屋にする予定。
片付けをしている時に、布ものもたくさん出てきた。
保存状態も悪く捨てなければならないものもたくさんあったのだが、いいものは保管。それを洗濯し、干しておいた。そして、物干し竿いっぱいに干されたそれらの布を見てびっくりした。
父が「なつかしい・・・」と言った昔のチェックの布団カバー。そして伊予絣であろう藍の絣の布。
そこに広がっていたのはまるで昔の風景。映画のワンシーンを見ているかのように時代が違って見えたのだ。布の色、模様だけでそんな気持ちにさせるなんて・・・と不思議だった。
あまりにその布と風景が合っていたもので、感動すら覚えた。
今の時代にこういう気持ちにさせるものがどれだけあるのだろうか。これがスタンダードだった時代を貧しく厳しい暮らしだったと知ってはいても、憧れてしまう。
祖父祖母の家。片付けからはじまり、一連の作業を通して、家族や家、歴史、暮らしを辿るような感覚があった。それは今後につながる何かヒントのようで、重要な行程だったように思う。